小麦粉について

稲庭うどんの原料は良質な小麦粉と塩と水のみ。その中でも特に重要なのが小麦粉の質です。

製粉技術により、小麦粉の品質は飛躍的に向上しました。

人間が小麦を食べ始めたのは1万年以上も前。日本で小麦が栽培されるようになったのは、今から二千年も昔の弥生時代です。今のうどんや素麺にあたる「めん」の製法が中国から伝えられたのは7世紀頃。
当時の製粉には石臼が使われていました。石臼を回して小麦を粉砕し、ふるいにかけて表皮や胚芽の部分を取り除く。このような作業を何回も繰り返し、質の良い小麦粉に仕上げていったのです。
石臼に代わり、現在世界で主流になっているロール機は2本のロールで小麦を粉砕する仕組みで、19世紀に開発。さらにピューリファイヤーという純化機(粉砕した小麦をセモリナ(胚乳)とふすま(皮)に分ける機械)も発明されました。

画像:小麦粉

小麦は、栽培の季節によって「春小麦」と「冬小麦」、粒の色によって「赤小麦」と「白小麦」、粒の硬さによって「硬質小麦」、「中間質小麦」、「軟質小麦」に分けられます。これらを組み合わせて、「軟質白小麦」といった呼び方をすることがあります。用途で分ける方法もあり、パン、麺、菓子用などが一般的。それぞれの小麦の特徴や用途は表のようになります。

硬質小麦 たんぱく質を多く含んだ小麦です。粒が硬く、強力粉に加工されます。粉にして水で捏ねた時、粘りと弾力が強く、パンや中華麺に向きます。主に、アメリカ産、カナダ産。
中間質小麦 たんぱく質の含有量は中くらい。ほどほどの硬さで、中力粉に加工されます。粉にして水で捏ねた時にノビがよく、日本麺に向きます。主に、オーストラリア産、国内産。
軟質小麦 たんぱく質の含有量が少ない小麦です。粒は軟らかく、薄力粉に加工されます。粉にして水で捏ねた時、適度にやわらかく、ビスケット、ケーキ、天ぷら等に向きます。主にアメリカ産。
デュラム小麦 硬質小麦の一種で、マカロニ、スパゲティ専用の小麦です。 主に、カナダ産、アメリカ産。
画像:硬質赤小麦 画像:軟質白小麦

小麦粉に水を加えて捏ねると、小麦粉に含まれるグルテニンとグリアジンという2つのたんぱく質から小麦粉特有の弾力性と粘着性をもったグルテンが作られます。うどんのシコシコした歯ごたえはグルテンの働きによるものです。
小麦以外の米やとうもろこしなどの穀物の粉はグルテンがないので、うどんを作ろうとしても、プツンプツンと切れてしまいます。また、同じ小麦でもたんぱく質の少ないものは、どんなに頑張ってもコシの強いうどんを作ることはできません。
稲庭の里で稲庭うどんが誕生したのは、たんぱく質の多い、良質の小麦の産地だったからでしょう。
現在は当時と比べると、うどん作りにより適した小麦を入手することができ、製粉技術も飛躍的に向上しているため、江戸時代より数段おいしい稲庭うどんになっているはずです。